どこでもステージ。
ステージが必要な時、レンタルで業者に頼むことになる。
自分たちでステージを組めないからだけど、これが結構高いのだ。
第一回『千人の月見の宴』でも、やはり専門業者にステージをお願いした。小さなステージだったけど、40万円くらいかかった。お金のない僕たちには、これは痛い。
とはいえ、それしか選択肢がないのだから致し方ないのだった。
ところで第一回では、四人座れる、大相撲の桟敷席のような特別協賛席を作っていた。
京阪紙工さんにお願いした、強化ダンボール製の桟敷席である。
「東京で花火の桟敷席に使ってもらったりはしてるんですが、大阪ではなかなか広まらなくて」と、社長の住谷さんは言う。
木と同じくらいの強度で、重さは3分の一程度、何度でも使える素材である。少々水に濡れても大丈夫だ。
「なら能舞台にも使えませんか?」と、僕は言った。
「うーん」と住谷社長は言った。
「ダンボールで造った能舞台は、話題性もあるし、やりたいなぁ」
「うーん」
「やりましょう」
「うーん」
数日後、試作品ができたから見に来ないか? と、住谷社長から連絡があった。
僕は、演出家の蓮行さんと一緒に京阪紙工の工場へ向かった。
「こんな感じになったけど使えそう?」
案内された場所に、高さ60センチ縦、横120センチのダンボールの箱が置いてある。
「乗ってみてください」と、住谷社長が言った。
蓮行さんが、早速乗って飛び跳ねてみる。僕も。
「これはいい。芝居に使いたいくらいです。知的財産権ですね」と、インテリの蓮行さんが言った。
これで能舞台を創りたい。と、僕は思った分けだけど、第一回『千人の月見の宴』には、間に合わなかった。モノづくりはそんな簡単じゃないのだ。オマエが言うな、だけど。
文:月見の宴実行委員会 代表 紙本櫻士
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