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村上春樹とブランドとオーバーストア

オーバー作家な時代へ。

 

村上春樹は、1979年『風の歌を聽け』で、群像新人賞でデビューした作家である。

1980年代になって、僕たちは部屋に心地よいものを満たすことが可能になった。

何を買っても、水準を満たした商品が世の中に溢れ出したからだ。

それ以前は、がっかりする粗悪品が出回っていて、いいモノを手に入れるには目利きが必要だった。

 

大滝詠一『ロングバケーション』や佐野元春『Happy Man』が流れ、松田聖子が『SWEET MEMORIES』を艶っぽく歌い、僕たちは村上春樹を読んでいた。

当時の村上春樹は、日本に最新のアメリカ文学を紹介した作家だと思っている。

独特な比喩や、(カッコの中で気持ちを説明したり)など、アメリカ文学でよく見られる手法が、僕たちは新鮮だった。

夏目漱石など明治の文豪たちが、外国の小説を日本人に紹介しながら創作活動をしたのに似ていて、作家としてのスタイルは新しいものではない。

作品の質は高いけどね。

 

その後、村上春樹はブランド化しながら現在に至っている。

一人勝ちといっていいくらい人気が続いている。

村上春樹現象は、実はネットでの一人勝ちに似ているような気がする。

ブランド化して1位になったら、一人勝ちが続くのがネットの世界だ。

 

モノが売れなくなったと言われて久しい。

出版業界も青息吐息だ。

1980年代に小説を発表するのは大変だったけど、現在、ネットを使えばたちまち小説を発表できてしまう。音楽業界も同じで、作品を発表するハードルが低くなった。アーティストは、レーベルからレコードをリリースする特権階級ではなくなった。

そして、作家が大量に現れる。

作品を買う人うより、発表する人が多いオーバー作家時代の到来である。

 

商品が行き渡っているのに、売る店が多いのはオーバーストアだ。

ネットの出現と少子化とともに、現在も加速中である。

ブルーオーシャンを見つけて生き残らないといけない時代なのかもしれない。

村上春樹が80年代に見つけた、鉱脈のように。

 

文:紙本櫻士

 

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