音楽体験が変化している。
1980年代には、かろうじて生き残っていたジュークボックスに、コインを入れて音楽を聞いたことがある。
レコードが選択され、自動的にかけてくれる機械だ。
ロボットが人間の代わりにレコードをかけてくれているようで、眺めているだけでも楽しかった。
一曲100だから(たぶん)、ずいぶん高かったなぁ、と今なら思う。
興味深いのは、ジュークボックスを作っていた会社が、現在ゲーム関係の会社になっていることだ。
セガ、タイトー、コナミは、ジュークボックスの会社だった。音楽とゲームは近い関係にあるのかもしれない。
スマートスピーカー(アレクサ)が家に来て、一番変化したのは、僕の音楽との関わり方だろう。
Amazonプライムに加入しているから、聴き放題になっているわけだけど、それまであまり使わなかった。あまりにも楽曲が多いため選択ができないでいたのだ。
で、持っている古いレコードをターンテーブルで聞いていたりしていた。さらに、面倒くさいのに、なぜか…。
それが、アレクサが来てから一変する。
とにかく選ぶのが楽なのだ。
例えば、坂本九を聴きたい。とか、ルイ・アームストロングを聴きたい。とか、鳥の鳴き声を聴きたい。とか、初めてリモコンを手にしてTVチャンネルを選べるようになった時みたいに、寝そべりながらの気楽な操作感なのだ。
そもそも、坂本九を僕は選んで聴くことがなかった。CDだってない。
山本コータロウも、トッド・ラングレンも、頭に浮かんだからなんとなく選んだだけである。
TVのリモコンでチャンネルを変えるようにね。
欅坂46も、アリスも、リストも、バッハも、相対性理論も、もはや同一線上に存在する。
鳥の鳴き声や波の音、台北の喧騒なんてのもある。
音楽を選ぶとき、ジャンルさえも飛び越えて選んでいるようだ。
僕なりの選択傾向はあるけど。
オンキョーが、スマートスピーカーを開発しているらしい。
「いい音で聴きたい」というコンセプトらしいけど、家電と連動させたり、ことによるとゲームを作り始めるかもしれない。
かつてのジュークボックスの会社のようにね。
文:紙本櫻士
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