ダンボールで能舞台は作れるの?

絶対、やめてください!!

 

能舞台を強化ダンボールで」と、僕は舞台監督の山代さんに言った。

去年の夏のことだ。

 

「普通にやりませんか」と、山代さんは応えた。

そんな冒険はやる必要もないし、第一、能楽師が納得しないだろうし、もし雨が降ったらどうする。というのが理由だった。

「確かにそうだけど、誰もやっていないから面白いじゃないですか」

「とにかく、去年通りでお願いします」

にべもなく、山代さんは言う。

 

数日後、改良した試作品ができたので『千人の月見の宴』を開催する現場でテストしましょう。と、京阪紙工の住谷社長から連絡があった。

やってみないと分からない。とその時、僕は思った。

僕は山代さんに連絡を入れ、現場に来てもらうようお願いした。

「見るだけですよ」と、山代さんの不機嫌そうな声が携帯から聴こえた。

 

待ち合わせは、午前10時に公園の駐車場である。

川上から強い風が吹いていた。

草いきれと川の香りがする。

僕とスタッフ2人は、舞台監督の山代さんと住谷社長を初夏の強い日差しを浴びながら待っていた。とても暑かったのを覚えている。

 

「絶対にやめてください!」とクルマから降りるなり言うと、山代さんはタバコを鞄から出し火をつけた。

顔が険しい。面倒なことを頼んでいるのかなと、僕も思う。

 

続いて住谷社長のトラックが着き、早速、僕たちは小さな舞台を造ることになった。

住谷社長が用意したのは9つの試作品だったが、4つあれば十分だ、との山代さんの指示で僕たちは4つ組み立てることにした。暑い。汗がTシャツに張りくような作業だった。

「真夏だったら、倒れてるね」と、事務局の広瀬が言う。

 

ところがである。

組み立て終わるなり、

「やりましょう」と、山代さんが顔を輝かせて言った。

少し離れて、腕組みをしている。また、舞台に乗って上で歩き回ってもいた。

「雨は?」と山代さんが住谷社長に訊いた。

「ハッスイ処理をしているから少々の雨でも大丈夫です」

「重さはどれくらい耐えられるのん?」

「10トン以上はあるかな。正確には、試験をしないと分かりませんが、外側の枠だけでも3トンくらいいけますから」

「ブラッシュアップを急いで、商品化して、みんなに使うてもらうといいですわ。軽いし、誰でも組み立てられるし…」と、山代さんがいつもの早口で言った。

 

「いけますか?」と、僕は山代さんに言った。

「やれます。問題は、無形文化財の能楽師さんがダンボールの上で演じてくれるかや」

山代さんが何かを考えているのか、しばらく黙っていた。

「能楽師さん、頑固そうやからなぁ」と、山代さんが腕を組みながら言う。

あんたが言うか? と僕は、ココロの中で突っ込んでいた。

 

文:月見の宴実行委員会 代表 紙本櫻士

 

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