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交野新聞連載小説 『僕の神様』 10話

『ボクの神様』 10話

「市長選って、なんや?」と、神様が伸ちゃんに訊いた。
「思いついだんだよ」と、伸ちゃんが答えた。
神様は、ゲームに飽きたようで、畳にごろんと横になって肘枕をした。
「みんなの投票で、カタノ市の代表に、俺はなる」
「入札のことやな」
「古風に言うとそうだな」
「おもろいのか」
「やってみないと分からん」
「そら、俺も困るやないか」
神様はテーブルに置いてあったコップに、麦茶を注いで飲みほして言った。



僕は部屋にカバンを置くと、伸ちゃんのいる離れに急いだ。
選挙の相談があるから来い。と、言われたからだ。
大人の選挙を中学生が手伝っていいのかは分からないけど、大丈夫なのかな伸ちゃん。

庭から部屋を除くと、扇風機に向かって神様が「あ゛~」と声を出している姿が見えた。
「伸ちゃんは?」
「髪切りに行くとか言って、出かけたわ」と、扇風機を通した震えた声で言った。
神様は、また「あ゛~」と、扇風機に叫び始めた。
今度は、高い声に変えている。
「何してんの?」
「コイツと話している。おもろいヤツやな。顔も涼しい」
扇風機と話していると言う。
いままでゲームをやっていたようで、テレビからドラクエの効果音が流れていた。広場に人が集まっているシーンで、主人公の名前がカミサマになっていた。
頭にターバンを巻いたインド人風小人のキャラだ。

「なんでインド人なの?」と僕が訊くと、
「ターバンがカッコいい。市長ってなんや?」
と、神様は僕の顔を見て言った。
「市の首長。生徒会長みたいなもんや」
「おもろいんか? それ」
「やったことないし」
「市長になるて、伸ちゃんが言うてたで」
僕は、黙ってドラクエの画面を眺めた。
「だーうえも、生徒会長になれたんや。俺が応援団呼んだるわ」
「中学の生徒会長と違うだろ」
「だーうえ、どうなってる?」
「あいつ、最近、変わったよ」

なぜか顔つきも違うように見える。
「真面目になった」と、僕は言った。
「援団は、頼りになる妖怪がおるんや」
「妖怪みたいな人ってことだよね」
「岸信介とはちゃう」と神様は言い、
「誰それ?」と、僕が言って振り向くと神様は消えていた。

つづく