冬にアイスを食べる。
冬にアイスが売れている。
コンビニがない頃、アイスは駄菓子屋さんで売っていた。
夏が近づくと、アイスを冷やす冷凍庫にホームランバーだとか、チューチューアイス(ゴムの中にアイスが詰まった丸いやつ)とか、カップに入ったバニラなどが、駄菓子屋さんの店頭に並ぶ。
アイスの種類もそんなに多くないが「夏が来た!」という、嬉しい気持ちと一緒に。
で、秋風が吹き始めると、冷凍庫にカバーがかけられ寂しい思いをした。
冬にアイスが食べられるようになったのは、コンビニの登場とかぶるように思う。
そもそもコンビニには、季節感がないのだ。
いつでも、欲しいものが便利に手に入るというコンセプトだから、売れればなんでも売る。
最初は、冬にアイスを食べるのは特別な行為だったように思う。
「冬でも売ってるんだ」と、驚いたものね。
でも、それが普通になっていく。もはや驚く人なんていない。
そういえば、コンビニの登場とともに、駄菓子屋が消えていったようにも思う。
駄菓子屋は、昔、子どもたちのコンビニだったのだ。
お菓子だけじゃなく、消しゴムとか鉛筆、ノートなんかも売っていたし…。
売れるものは売るというコンセプトは、実は、コンビニと同じである。
子どもたち限定だけど。
11月15日は、冬アイスの日らしい。
15の数字は、乳固形分15%以上がアイスクリームの条件だから。こじつけ感満載だけど、立冬の季節にアイスクリームの日を作っている。
これは特別感の演出だろう。
特別が手に入るのは嬉しい。
で、行き渡る内に、特別感が消えていく。
冬のイチゴもキュウリもトマトも、もはや特別ではない。
秋になるとアイスが消えていくのは、季節を感じるよさだ。
アイスが登場すると夏が来た。と、ワクワクするのは、季節の到来を喜ぶココロだ。
今となっては、わざと不便を楽しむのも、ひとつの特別なのかもしれない。
旬のモノを食べる贅沢が、実は特別なのだ。
文:紙本櫻士
https://komezensen.jimdofree.com/
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