12曲3000円で売っていた昭和のレコード。
電子書籍が定額制になりつつある。
僕も定額制を利用していて、全部ではないけど読み放題を楽しんでいる。
結構それで十分で、一冊、1500円を払って読む気がなくなってきている。
もちろん、どうしても読みたい本は買う。
ただ定額制の本に比べ、
「買うほどの価値があるのか?」
と、思うようになってきた。
過去の作品に、定額制は秀逸なものが多いのだ。
これは、危ない。
本を書くのは大変な作業で、これが定額制になると、作家たちの『作品を書く意識』が変わるのではないか、と思うのだ。
定額制にふさわしい書き方も、生まれつつある。
これは、作家の意識の問題である。
昭和の時代、レコードは1枚2500円から3000円くらいだった。
一枚に12曲くらい入っている。
レコードに、それほど価値があったのだ。
僕たちは、慎重にレコードを選んだ。
本も同じである。
第二次世界大戦後、本やマンガを安く貸し出す『貸本屋』が流行った。
1960年くらいまで、貸本マンガは大人気で、水木しげる『墓場鬼太郎』など快気モノに子どもたちは熱中した。子どもたちは、お金がないから安い本を借りたのだ。
その後、子供たちでも安く買える週刊誌が発行部数を伸ばし、貸本屋がすたれる。図書館の充実も関係していたようだ。無料だしね。
貸本マンガ家は、安い原稿で大量に作品を書くことを求められた。
NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』で、貸本漫画家時代の家水木しげるの苦労が描かれている。
現在の小説やマンガ定額制は、安い原稿を大量に書く作家を生み出しているのではないか?
読者は、もはや、タダで読んでいるような気分である。
多少つまらなくても、次々借りればいい。
慎重に選ぶ必要がないのだ。
貸本漫画家でもスターが存在し、ヒットを生んだ。
でも作家というより、本質的にマンガ生産者に近い。
定額制は、音楽や文学、マンガの世界をぐずぐずと壊す制度のように感じる。
小説家漫画家も、生産者と作家の二極化の道をたどっている。
ネットの影響だろう。
いいものは残る。
これを信じて作っていくしかない。
デジタル化は、作家にとって厳しい世界である。
それと同時に、中間業者の出版社を通さずに発表できる道を作ってくれた。
マネタイズは、そこにありそうだ。
文:紙本櫻士
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